仲道郁代さんのピアノコンサートに行ってきました。理由はいつもながらベートーヴェンのピアノソナタ32番がプログラムに含まれていたからです。
いつもと異なるのは、仲道さんについてはテレビでよく拝見しており、NHKのショパン特集やNHK教育の初心者向けピアノレッスン講座なども
逃さず観ておりました。外見が美しい方だけに、「演奏家としての正当な評価が難しいぞ・・」と穿った見方をしていた私です。
また、仲道さんの熱心なファンは多く、ネットなどでは、CDの演奏より本番が良い、という意見をしばしば読んでおり、その点についても
今回、私なりに確かめてみたいと思っておりました。
結論から書きますと、まず32番のアリエッタは良かったです。CDで聴いた演奏より中盤が充実していて、後半への盛り上がりに感動しました。
ただ、最上レベルの演奏だとは思いませんでした。ミスも多いし(特に音抜け)、演奏の完成度はイマイチに思えました。
第一楽章後半では大きなミス。流れを切らすことはありませんでいたが、動揺が収まるまでに少し時間を要していました。
それでも第2楽章手前でひと呼吸し、第2楽章にはその動揺を持ち込まず、CDではやや単調に思えた中盤を表情豊かに演奏してくれ
アリエッタが目的の私にも満足感を与えてくれました。
ミスが多いのは、スケジュールが過多でレパートリーも幅広いためもあると思いますが、しかし、どんな状態でも、
曲の中に印象的な部分を作ることを忘れず、まるで「退屈だ、つまらない」といって客を帰すような失礼なことだけはしない!と
決めているかのような演奏だと感じました。
仲道さんは多分、上手く弾く(楽譜の再現度を追究する)ことが、必ずしも一番大切だとは思っていないのではないか、と。
人のやることだから、ミスもあるだろうけれども、曲のいい部分は魅力的に弾いて聴衆に感動を与えたい、という感じといいますか・・。
エンターティナーとしてみると、超一流だと思うのですね。良い意味で、銀座のママさんの才能があるな!と思いました。
100%、ほめ言葉のつもりです。美しく・賢く・楽器も弾ける(あたりまえか・・)。
初めて仲道さんのコンサートに足を運んだのですが、ピアニストが登場するなりマイクを持ってMCを始められたのには少しビックリ。
「こんにちは!」「(会場)こんにちは」。?声が小さいぞ?「こんにちは!」「(会場)こんにちは!」って感じで。(笑)
日曜の昼間のコンサート。前半がベートーヴェンで、後半がショパン、すべて超有名曲というプログラムだったこともあるでしょう。
客層がベートーヴェンで好きが多そうだと察したのか、ベートーヴェンをたてつつショパンの紹介をされる。TPOの使い分けが的確です。
話が上手い、ということは頭がイイ、ということだと思います。舞台慣れしすぎている、と感じるところもありましたが。
ここ一年、音楽大学で教鞭をとられていた方の32番などを聴いてきたこともあるのかもしれませんが、
トークだけでなく、演奏内容も含めて客を楽しませ、またコンサートに来たいと思わせる多彩な芸(才能)が、仲道さんにはある、
(或いは他のピアニストの方々はあまり持ち合わせていない)、ということを強く感じました。
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今週はもう一つ、小澤英世さんという方のコンサートに出向きました。やはりベートーヴェンのピアノソナタ32番がプログラムに組まれていたからで、
私は小澤さんという人を全く知りませんでした。
ベートーヴェンのピアノソナタ6番、22番、32番というプログラム。前半、6番と22番は対位法が核となる曲に思いますが、
その2つの旋律の絡む(ユニゾンする)場所でのミスが目立ち、肩に力が入りすぎでイマイチでした。この方もトークを挟む方で、
曲の解説をしてくださっていたのですが、話といい、演奏といい、少し堅物すぎる印象が強く、
そう、私によく似たタイプのようで、固定観念が空回りするタイプに思えてなりませんでした。
前半の様子から、後半の32番は全く期待していなかったのですが、アリエッタは良かったです。前半のガチガチの演奏とは異なり、
アリエッタの柔らかい世界を大切にしながら弾いてくれました。正直なところ、ミスも気になりましたが、32番に関しては、方向性が良ければ
私の脳内でミスを補完して聴ける状態がこのところできており、(それでも気持ちの入っていない演奏は補完しようがありません)どこまで
客観的に評価できたかはわかりませんが、少なくとも前半の白いジャケットを脱ぎすて、トークも封印して集中して演奏されただけのことが
あったと思います。
最後にヴァイオリニストの奥様(?)とのドビュッシーの《ヴァイオリンとピアノのソナタ》を演奏してくださったのですが、これがとてもよかったです。
私は、ドビュッシーがあまり好みではないのですが、この演奏を聴いて、食わず嫌いは止めなくては、と思いました。
なにより、堅物のピアニストに感じられた小澤さんが、奥様のサポートに回ったとたんに柔らかい音色でピアノを奏で始めたのには驚きました。
旦那様は、ご自身の思い込みで一人突っ走ってしまうより、しっかりとした奥様の同伴で抑え気味に演奏されたほうが上質な感じが
でているのを(なんだか)好ましく思えたコンサートでした。
ちょうど仲道さんのコンサートの数日後に聴いたため、仲道さんのコンサートと比べてしまい、仲道さんの演奏のレベルの高さと、
エンターティナーとしての才能の高さに改めて感心してしまった次第です。(なかなかああいう風にはできません)